TSUTAYA DISCASは何が届くかわからないところが面白いのだけれど、本作と「旅のおわり世界のはじまり」が同時に届いたのは、映画の神様の悪戯だろう(←いやいや、たまたまリストの加減だってば)。
本作は震災のあった2011年1年間のAKB48を追ったドキュメンタリー。また「旅のおわり~」は最新の「女優」前田敦子の主演作だ。
前田敦子の映画のキャリアは、ちょうど本作の撮影時期に公開されたのが「もしドラ」、この次の年の「苦役列車」からが彼女の本格的な女優活動が始まるので、「映画にも出るアイドル」と「映画女優」の分水嶺が2011年だったということになる。
私はAKB48の活動をほとんど知らなかったので(それでも、本作をみて10人以上顔と名前が一致したのには自分でも驚いた)、いったいにアイドルというものが大変なのは理解していたつもりだったけど、ここまで壮絶なものであるとは知らず、少なからずショックを受けた。
ちょうど2011年なので、映画全体に通底するキーのひとつに東日本大震災がある。
被災地周りをしている彼女たちも、そうでない彼女たちもそうなのだが、本作では彼女たち自身が自分たちの存在について自問自答する。
彼女たちの中には実存主義という言葉すら知らないメンバーもいるかもしれないけれど、この映画自体が実存主義的なアイドル論となっているのだ。
それこそ、サルトルの「飢えた子供を前にして、文学には何ができるか」という主題の、かなり良質な回答のひとつとなっている。
まあ、そんな小難しいことをうだうだ語るよりは、ただ本作を見て慄然とすればよいのだが。
ほかのレビュアーさんも書かれているが、過呼吸でぼろぼろのあっちゃんが、歌に入った途端笑顔になる瞬間は、背筋が凍りついた。この娘は怪物だ。修羅だ。
今の前田敦子という女優は、偶然などでは決してなく、このような壮絶な経験から産まれたということを改めて思い知らされた。あっちゃん、今年も素晴らしい女優活動を見せてね。応援しています!